今回は世界的に有名なバイオリニスト、イツァーク・パールマンという巨匠のお話です。
イスラエル出身のパールマン氏ですが、現在はこちらニューヨークを本拠地に、世界中で演奏活動を続けていらっしゃいます。4才の頃にかかった小児麻痺のため、下半身が不自由になってしまったものの、バイオリンは諦めず続けました。十代の頃から複数のコンクールで優勝し、17才でカーネギーホールデビュー。現在は演奏活動の傍ら、ジュリアード音楽院で後進の指導にも力を注いでいらっしゃいます。
こちらの映像、少し古いのですが、彼のユーモアも交えた素晴らしいサラサーテ作曲、”チゴイネルワイゼン”の演奏。
そして、子どもの人気番組、セサミストリートへの出演も!
巨匠なのですが、”巨匠!”と呼ばれる人にありがちな『近寄りがたい』、という雰囲気は全く感じられず、やさしそうな人ですね。そんなパールマン氏がバイオリン上達のための練習方法について語っています。残念ながら映像をこちらへ直接載せられないのですが、リンク先からご覧くださいませ。(https://www.facebook.com/ClassicFM/videos/10154191589649260/)
ここでパールマン氏が話していることを要約すると、こんなことです。
「練習する時は必ずゆっくり練習することが大切。無神経に練習してはいけません。何時間も適当に練習したのでは実になりません。丁寧に2時間練習した方が無神経に8時間練習したよりずっと効果的です。
効果的な練習のコツは
①ゆっくり練習する。
②目的を持って練習する。練習の必要な部分を取り上げて部分練習すること。
③そして練習している自分の音を良く聞き、忍耐強く、丁寧な練習をすること。デタラメに練習し続けたらそれがクセになってしまい、上達できません。
練習をはじめて月曜日はうまく弾けるかもしれません。でも翌日火曜日はあまりうまくいかなかった場合、そこで諦めてはいけません。それはただ、まだ完全には習得できていないというだけであって、ゆっくりな練習を続けてみてください。そうすると、水曜日にはもう少し上達できているでしょう。それを更に続ければ木曜日にはもっとうまくなるはずです。そこまでたどりつくのに一番大切なのは忍耐(patience)です。」
「忍耐」
バイオリン練習時の忍耐とは、つまり、難しいことがうまく行かないからといって諦めず、そして焦らず、続けて練習するということ。
私も、もちろん子どものころいつも練習が楽しかったというわけではありません。大人なって、演奏活動することによって収入を得るようになった今はなおさら練習は必要不可欠。時にはシュトラウスやワーグナーなど、細かい音が盛りだくさんのオペラなどを弾かなければならないのですが、約30年間バイオリン・ビオラを弾き続けた私にも簡単ではありません。そんなときにどうするかというと、メトロノームを付けて2倍くらいゆっくりなテンポで難しい部分を練習します。そのテンポで弾けたら少ぉ〜しだけ目盛を上げてもう一度その部分を弾き、うまく行かなければテンポを下げてやり直します。この作業を何度も繰り返し、時には理想のテンポで弾けるようになるまで何日もかかることだってあります。地道な作業ですが、忍耐強く続ければ必ず難しいものが弾けるようになるのです。こんなつまらない作業をどうやって続けられるかというと、弾けるようになった時に得られる「自信」が次に壁にぶつかった時へのやる気へつながるからではないか、と思います。ホールで観客の前で演奏がうまくいくと、とても気持ちが良く、音楽家になってよかったな、としみじみ感じさせられることがあります。
私のもとでバイオリンを習う生徒さんたちに絶対に音楽家になってほしいとは考えておりませんが、子どもの頃にレッスンを受け、練習を重ね、上達するいう経験は非常に有意義なことだと思います。なかなか上達できず、辛い時もたまにはあるでしょう。6月4日には当教室の発表会が予定されています。そこで生徒さんたちの何ヶ月も重ねて来た練習の成果を見られることを楽しみにしています!