コラム 〜第4回〜 『練習を続けるための工夫』

〜第4回〜

 

バイオリンレッスン成功の秘訣 その三

 

前回のコラムで、楽器を習うとき、水泳やサッカーなどと違い、家での毎日の練習が必要という話をしました。今回はその練習を続けるコツをご紹介したいと思います。

 

一つのものを毎日続けるということは簡単そうで、なかなか難しいですよね。大人にだって難しいことだと思います。運動、外国語の練習、日記、などなど続けようと思っても続かなかった覚えがありませんか?(笑)でも何か習慣にすると続きやすくなることもあると思います。子どもは練習や宿題をやる時間を決め、毎日習慣にすると生活のリズムが整い、ものごとをスムーズに行いやすくなります。例えば朝起きたらまず15分バイオリンの練習をする、とか学校から帰ってちょっとおやつを食べて一息ついたら遊ぶ前に宿題をすませる、などルーティーン(習慣)をつくることをおすすめします。

 

私はマンハッタンの公立小学校でバイオリンのグループクラスを教えているのですが、特に子ども達のルーティーンの大切さを感じさせるのはこのときです。特別な学校行事のため普段と違う時間、違う教室で授業をするだけで子ども達のまとまりがなくなります。週の同じ曜日、同じ時間、同じ教室、同じ先生でクラスが続くとバイオリンのように非常に細かくて難しいことを習う授業でも、子ども達は集中して学べ、授業が楽しく、スムーズにいきやすいです。また、家で毎日練習してくるよう、練習チャートを配り、毎週同じ日にチェックします。練習した日は親にサインしてもらう決まりです。7日間毎日練習した子にはリボンやシールのご褒美をあげます。それを1ヶ月間続けた子にはもっと特別な金色のリボンをあげる等々、意欲を高めるお手伝いもします。

 

バイオリンの成果は1週間や2週間ではあまり大きく現れないため、小さなお子さんには辛抱の強いられる楽器です。目に見えるご褒美でちょっと助けてあげると良い方向へ導いてあげられることもあります。でも、お菓子などのご褒美だと食べてしまったらおしまい。子供はそんなことはすぐに忘れてしまいますから、後に残るご褒美にするのがポイント。そうやって続けていき、1〜2ヶ月したところで練習チャートを一緒に振り返ってみるとずいぶん進歩したことを実感できるでしょう。2月前は弓がなかなかまっすぐに弾けなかったけれど、今は弓もまっすぐ、1の指まで弾けるようになった!など、小さな進歩を大きく祝ってあげましょう。そうすることでお子さんに自信がついていき、これからもがんばろう!という意欲にむすびついていくはずです。

 

英語にインスタント・グラティフィケーション “instant gratification” (すぐに得られる喜び)という言葉があります。これはポンッとボタン一つ押してネットで欲しいものが手に入る、食べたいものがその場で食べられる、など、欲がその場で解決されて満足するということ。赤ん坊なら泣いたらすぐにミルクをあげたりする必要がありますが、成長するに従い、お子さんが難しいことに時間をかけてゆっくりジワジワ成果を上げるという経験するのは非常に大切なのではないかと感じます。子どものころに時間をかけ、努力し、成功する、という経験はその後の人生にとって価値ある財産となるはずです。ひと月に1cm成長できれば大成功!そうやって根気・忍耐・粘り強さを育んでいければ、将来、仕事などで苦労することに直面したときにあきらめず、解決・改善方法を考えられる人に育っていけるのではないか、と思います。お子さんの毎日のバイオリンの練習のサポートは、保護者の方にとっても楽なお仕事ではありませんが、家族でチームになって一生懸命応援してあげると良い結果が生まれるのではないかと思います。

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