ブログ更新が久しぶりになってしまいました。
秋からハーレムのOpus 118での教える仕事と、演奏活動の両立でなかなかブログにたどり着く事が出来ませんでした。音楽家として生活して行く事はとても大変な事なので仕事がたくさん頂けるのは本当にありがたいのですが、30代半ばになるとさすがに適度に休みを取って調整しながら行かないと体も心もついて行けなくなるんだな、と感じているこの頃です。
さて、福田千尋バイオリン教室では日本へ帰国してしまった生徒さんや、新しく入って来た生徒さんがいて、少々顔ぶれの変化はありましたが、みなさん日頃の練習を一生懸命やっていてどんどん成長していて先生はとっても嬉しいです。
私の方は先日、久々にカーネギーホールで演奏して来ました。カーネギーというと音楽の大御所ですが、意外とニューヨークに住んでいる音楽家にはたまに演奏機会が巡ってくる場所なのです。例えばジュリアード音楽院に通っていれば1年に最低一度はジュリアードオーケストラの演奏会がカーネギーで開かれます。私もカーネギーデビューはジュリアード学生時代に体験させていただきました。学生修了後も数回の演奏機会があり、何度経験しても大変嬉しい事です。今回は約2年ぶりの機会でした。
いつもエキストラで演奏させていただいているメトロポリタンオペラ・オーケストラのシンフォニーコンサート。ベートーベン、シューマン、カーター、ドヴォルザーク、シュトラウス、と大変濃い演目でしたが、Metのような素晴らしいオーケストラと演奏出来る事はとっても幸運に感じます。これまでに国内外の色々なオーケストラでお仕事をさせていただきましたが、Metは週6日間、7回オペラを演奏している楽団です。オペラを演奏するという事は交響曲を演奏するよりも余程フレキシビリティー、そして集中力を要する仕事だと感じます。そういう仕事をほとんど毎日やっている人たちがシンフォニーを演奏すると非常にお互いを聞く耳、そして協調性が育っていてスっとうまく行くのです。
オーケストラ奏者の視点からお話をさせていただくとオペラを演奏するという事は少し子供を育てたり、子供を教えたりするのと似ています。シンフォニーを演奏する場合はオーケストラ奏者同士の間だけでバランスよくアンサンブル出来ていれば良いのですが、オペラは歌がそこへ参入して来ます。オペラ歌手の方は個性あふれる人材が多く、人それぞれ同じアリアを歌わせてもテンポ、音の延ばし方など様々で伴奏側がよ〜く聞いてあげて臨機応変に対応しなければいけません。また、同じ演目を10回くらい繰り返しますから同じ歌手でも日によって少し違った歌い方をしたり、日によって違う歌手が出演したり、、、、。だからオーケストラはよ〜く指揮者を見て、しっかり歌を聴いていなければバラバラになってしまう。さらにこれがたいてい一公演、3時間半から4時間という永さ。子供相手に仕事をし始めてわかった事ですが、小さな子供は日によって様子が非常に違います。集中力の高い日、ちょっと疲れている日、バイオリンなんで辞めてしまい日、やっぱりバイオリンが楽しい日、、、、、。今日は新しい曲を教えよう!...なんて思っていてもそう上手く予定通りには行かなかったり。
そんな子供のお天気にうまく調整して行くのが小さな子供を教えるバイオリンの先生のお仕事の一番大事な部分。こちらがどんなに疲れていてもそんな事は子供には関係ありません。
私はMetではエキストラとしてお仕事しているので必ず毎週弾いている訳ではありませんが、フルタイムでやっていると結構大変な仕事なのです。こういう演奏家の団体がシンフォニーを演奏するというのはとっても豪華な事ですね。
数年前にビオラを背中にしょってニューヨーク市内の地下鉄に乗っていた時、見知らぬ観光客のような伯父さんから声をかけられた事がありました。
“How do you get to Carnegie Hall?”
「カーネギーホールへの行き順は?」
一瞬、「えーっと、次で地下鉄を乗り換えて、、、」と言いそうになりましたがこの伯父さんは冗談を言ってるんだなと気付き、
“Practice, practice, practice!”
「練習、練習、練習!」
と返答し和やかな会話へ流れ込んだ事があります。(これはアメリカではよく聞かれるジョークなのですが、知らないと上手に返せないかも知れませんね。)
実際、カーネギーホールで演奏する機会が巡ってくる人はたくさん練習しています。当教室の生徒達もPractice, practice, practice!と練習を重ねて上達して行くのを見ているだけでとっても嬉しいですが、いつかカーネギーで演奏する機会が出来たりなんかしたらすごく楽しいでしょう。これからもコツコツ練習を積み重ねて頑張ってほしいと思います。
(上の写真は2月8日、カーネギーホール、リハーサル休憩時の風景)